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2018.05.08 UP
加古里子さんの死を悼んで

加古里子さんが亡くなられた、92歳は大往生であろうか。知らない方は女性?と思うかもしれないが、”かこ さとし”と読みます、立派な男性のお爺さんです。

絵本や児童文学などに興味が有る方はご存知かと思いますが「だるまちゃん」シリーズや「からすのパンやさん」などで知られる絵本作家です。60年近い作家生活の中で生涯現役を貫き死の寸前まで絵本を書き続けていました、その数600点近くになります。

加古さんは変わった経歴の持ち主です、戦時中は東京大学工学部の学生でした、そして多くの仲間が戦場へ散っていくなか、軍国少年だった加古さんは極端な近視で兵役を外され思わぬ生をもらうのでした。大学を卒業し終戦後、昭和電工と言う会社に勤めます。これもご存知の方は余りいないかもしれませんが、戦後の政財界やGHQを巻き込んだ大疑獄事件「昭電疑獄」、これで時の芦田均内閣が崩壊するのですが、なんと入社して直ぐに会社は社長は逮捕されるや大変な状況でした。給料が出ずに代わりに佃煮が支給されたそうです、でも大混乱の会社を彼は辞めず大学時代から志した研究に没頭し36歳のときに博士号を取ります。

会社に勤めながら、戦後の教育や医療などに困難を抱えた人々を支援する「セルメント活動」に力を注ぎます、この中で戦災にあった子どもたちへ観せていた紙芝居が福音館書店の編集者の目に止まり59年に絵本「だむのおじさんたち」でデビュ-したのでした。加古さんは「かわ」「海」「地球」「宇宙」など、子供の好奇心を引き出す科学絵本も数多く手がけています、自分が学生時代に学んだことや知識をもとにして、専門家に取材し最新の知見を盛り込み、わかりやすい文章や、押絵や、図版を多くして子供が喜んで学べる本にしています。

※「かわ」は絵巻じたての絵本で折り畳まれたページを広げると約7mにもなります両面印刷で、表はカラー(4色)印刷、うら面は、黒と水色の2色印刷になっています。表と裏、二通りの楽しみ方ができますよ。川の源流から海までの川の旅が一望できる本です、こんな本他にはありませんよ、ぜひ本屋さんで見てみてみて下さい。「海」も「地球」も「宇宙」も全部すばらしいから是非見てみて欲しい!!!大人が持っていてもいい絵本ですよ。

2008年には約29万点の資料をもとにまとめた「伝承遊び考」全4巻を完成させ菊池寛賞を受賞しています。亡くなる寸前まで盛んな創作意欲を見せていましたが5月2日亡くなられました・・・・・・・・・・合掌

 

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